日記136日目
リリベルの月7日。
今のところ全くアイツに勝ててない。
そりゃ私だって大人の――しかも鍛えてるアイツに勝てるとは思ってない。
てかアイツ、遊びは本気でやるタイプみたい。
一切容赦なし。一応のハンデで少し時間を置いてから追いかけてくるけど、その後は捕まえるのにあの手この手使ってくる。
短剣が飛んでくるのなんて当たり前で、前なんて髪も普通に引っ張ってきた。
引っ張られて腹が立ったから、その日の内にお姉ちゃんに頼んで短く切ってもらったけど……
お姉ちゃんもクロエも凄く残念がってたなー。
私は軽くなったし、元々痛んでたから気にしてなかったのに。
「お前は何故反撃しない?」
最近は慣れてきた唐突な質問にもサティリナは動じることなく、飲んでいた果実水のグラスから口を離した。
「何でって……やったら絶対おじさん倍返しするじゃん」
今まで追いかけられていた中で一度は考えたことはある。
しかし次の瞬間には殺傷沙汰となって血塗れになる未来が容易に想像でき、その瞬間に却下したのだ。
わざわざ自分から自分の首を絞めるような真似はしない。
今でさえ既に息苦しいのに、これ以上自分を追い詰めるほど被虐体質ではないのだ。
クロエも同じ意見であったらしく「ああー」と小さく同意の声を上げていたが、男に一睨みされてすぐに黙った。
「……つまらん」
「おじさんはもう少し平穏に生きてよ」
こんな子供を追い掛け回すより、よっぽど健全だ。
そうため息と共に零せば「フン」と男が鼻を鳴らした。どうやら少し苛立ったらしい。
そんな彼に再び盛大なため息を吐いたサティリナが男に睨まれるまであともう少し――
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今日の記録は大体2分ぐらい!
今までを思ったら結構いい成績だと思う!
最短なんて10秒ですっ転んで捕まったからね。
……頑張ろう!