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日記8日目

お姉ちゃんが言ってたことは本当だったみたい。
昨日の夕方くらいまで人もいたのに、今は誰もいないみたいで宮全体がしーんと静まり返ってる。

さっきちょっとドアを開けて見たけど、本当に誰もいなさそうだった。

昨日の晩はお姉ちゃんの隣で寝た!
少しドキドキしたけど、ベッドはふかふかで良い匂いがして、気づいたらもう寝てて朝になってた。

起きたらお姉ちゃんが着替えさせてくれて、汚れてない新しい服に感動した!
お姉ちゃんはくれるって言ってたけど…大事にしたいけど、たぶんすぐ汚してダメにしちゃうんだろうなあ。なんか勿体無い。

いつかきちんと恩返しできたらって思う。

あと、昨日書くの忘れてたけど「私」の目ってすごくキレイな青色だった!
驚いて鏡を見てたら、お姉ちゃんが「それは『おうのあお』よ」って教えてくれた。
なんでもアンバルスト帝国の皇族は、代々この色の目をしていて、「空に祝福された証」ってことになってるらしい。
確かに空の色を深くしたみたいな、宝石みたいな、不思議な色をしてるからそう言われてても違和感はなかった。

ただ、それが自分の目ってところはすごく変。
いや初めて「私」の顔見て、可愛い顔してるなーとか薄い金髪だったんだ!とか思ったけど、まだそれが自分だって思えないっていうか、あり得ないっていうか……

さっきももう一度見たけど、やっぱり変としか思えなかった。
変な顔してたらお姉ちゃんから「具合でも悪いの?」って心配されちゃった。

うん。もう見ない!
自分の顔見なくても生きていけるしね!

~~~~~~

少女――皇女がレーティアの部屋に泊まって二日目。
今日は朝食の後、彼女と共に外に出ていた。

本日の皇女の服は茶色のワンピースだ。それに合わせて買ったのだろう黒のブーツも、どちらも幼い皇女には少々大きいが、子供はすぐに成長するもの。少し大きいぐらいで丁度良いのだろう。

新たな服の上からブランケットを羽織らされた皇女の隣には、昨日と同じワインレッドのローブを着たレーティア。

二人は手を繋いで宮の外に広がる庭園へと散歩に出たのだ。

いつもは見つけた瞬間に自分を部屋に押し込めようとする侍従たちもおらず、またレーティア曰く他にもいるという妃たちの姿もない。

「わ~~っ!
 すごいすごい! 真っ白だよお姉ちゃん!」

宮の中から初めて出た皇女は一面の雪景色に感動し、興奮しながら周囲を見回し続けていた。そんな彼女をレーティアは微笑ましく見守り、時折庭園の説明をしてくれていた。

「あの先が“月明宮”――(まつりごと)が行われている場所よ」

そうレーティアが向いた方角を見れば、風に乗って微かに何か音楽のようなものが聞こえた気がした。

彼女の言う『月明宮』は全く見えない。
幼い自分の背が高くないことは勿論のこと、だいぶ距離があるからだろう。
それに加えて針葉樹のような背の高い木がまるでその『月明宮』とやらを隠すように植えられていた。

聞こえた気がした音楽も、たぶん昨日レーティアから『宴がある』と聞いたことによる錯覚だと思った。

「庭園って広いんだね!」

白く凍った息を吐きながら見上げれば、レーティアが「そうね」とフードの下で微笑んだ。

そして今彼女たちがいるのは、宮を囲むように設けられた庭園の一角だった。
どうやら庭園から他の庭園に行くには騎士たちが見張っている門を潜る必要があるらしく、それも許可がなければ自由に出入りできないようになっているらしい。

そう説明を受け、目を細めれば確かに遠目に誰かが立っているのが見えた。
つまりはあれが騎士に守られているという“門”で、そこを超えなければ他の庭園にいけないのだろう。

どれだけの庭園があり、他の宮はどんなものなのか。
それをレーティアに尋ねてみたがどうやら彼女も後宮の全容を知っているわけではないらしく、『ごめんなさい』という謝罪と共に頭を振られてしまった。

どうやらこの皇女はかなり好奇心旺盛らしく、それを聞いても落胆するどころか『後で自分で探索してみよう!』などと思ってしまった。
それがいつになるかは分からないが、それでも未知の場所やそこにある物を考えただけで胸が躍った。

逸る自分を抑えるために、皇女は先程の話題へと思考を切り替えた。

「えっと……
 今日はみんなその“げつめいきゅう”にいるんだよね?」
「ええ。そうよ」
「政ってことは、皇帝陛下もあそこで働いてるの?
 お姉ちゃんも皇帝陛下には会ったことある?」
「そうね……
 皇帝陛下も月明宮で執務に就いていると聞くわ。
 私も一度だけなら皇帝陛下にそこで謁見させてもらえたわ」
「へー」

つまりはレーティアの指す方に皇帝が高確率でいるということだ。決して近づかないようにしよう。そう皇女は心の中で頷いた。

「ここって、雪が解けたらお花でいっぱいになる?」
「ええ。春になればたくさん見られるわ」
「そうなんだ!」

頷いたレーティアに皇女は顔を輝かせた。
冬は冬で雪景色が美しいが、春は春でまた違った景色が見れるのか。
国の中でも最上級の人たちが住む場所なのだし、きっと庭師たちが綺麗に整えてくれているのだろう。見るのが楽しみになった。

「あ。誰も来ないなら雪だるま作ってもいい?」
「こ、こら!
 あまり触ると体を冷やしてしまうでしょ。もう戻るわよ」
「えー」

どうやら今日は軽い散歩だけのようだ。
雪に触れようと屈めばすぐに手を引っ張られ、強制的に立ち上がることになった。

「むー……あ! じゃあ、春!
 雪が溶けてお花でいっぱいになったら、また一緒にお散歩しようね!」
「……そうね」

その頃にはきっと気温も安定しているだろうから、今のように『体を冷やす』という名目で連れ戻されることはないはずだ。そう思って笑顔と共に約束を持ち出せば、レーティアが呆れたように笑ったのだった。

~~~~~~

今日はお姉ちゃんと庭園を少し歩いた。
本当に少しだけだった。体を冷やしちゃうからって強制終了しちゃった。

しかも庭園がまた広い!
ほとんど白かったし、光が雪に反射してわかり辛かったけど、結構広い。
春になって探検する日がちょっと楽しみになった!

「げつめいきゅう」ってところが、よく皇帝がいる場所なんだって。
だから、絶対に「私」が近づいちゃいけないところってのはわかった。
後はお姉ちゃんもあんまり知らないらしくて、要点だけまとめたら「お庭がいっぱい」って事だけ覚えておくことにした。
だだっ広い庭を持ってるとか、その辺りはやっぱり大金持ちだなー。

あと、今日のお風呂はお姉ちゃんと一緒に入った!
冗談で「一緒に入ったら、用意が楽だよ」って言ったら本当にそうなっちゃった!!
美女とお風呂とか、別の意味でのぼせるところだった…!
お姉ちゃんの肌白くてキメ細やかでスベスベで、胸も意外と大きくて何もしてないのに谷間があったんだけど!?

お姉ちゃんは着痩せタイプってことだね!

前世のお母さんとか友達の中でもそこまで大きい人いなかったから、好奇心に負けて触ったら「何してるの!」って怒られた。でも後悔はない!
男の人が胸に惹かれる理由が少し分かった気がする。あの柔らかさは抗えない。やばい。

明日でこのお泊りも終わりだけど、お姉ちゃんがお母さんみたいに優しくしてくれたから、もう少し頑張って生きれそうな気がする。

がんばれ「私」!おー!

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