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幻想水滸伝 ~希望の道標~

プロローグ:始まり

―――少女は吊橋の上で、ある一点を見詰めて立ち尽くしていた……。


少女の名は
両親と兄の四人で山奥のキャンプ場までアウトドアに来ていた。

そして先程急に降り出した雨に追われ、キャンプ場手前の吊橋を渡ろうとしていた所、目の前の橋の上で、白くボンヤリと光る人影と遭遇したのである。


「あの……」

恐る恐るが声を掛けるとその人影は一瞬、驚いた様に振り返り、目を細めた。

今にも泣き出しそうなその瞳は、ひどく怯えている様にも見える。

相手は正体不明の人物なのだが、余りにも怯えているのでは思わず心配になり声を掛けた。


「どう……したの? 大丈夫ですか?」


その人影に近づこうとした時、橋の向こう側から兄の呼ぶ声が聞こえた。


「おーい、
 何やってんだ、早く渡って来いよ! 風邪ひくぞーっ!!」

こちらに向かって手を振りながら呼んでいる兄の姿が見える。


「あ! お兄ちゃ……」

が返事をしようとしたその時、突然目の前にいたその人影は兄の声に驚き、手を空に向けて揚げた。


ズドオオ――――――ン!!!

―――次の瞬間、大音響と共に橋に強い衝撃が走り、吊橋は真ん中から切れてしまった。


「 きゃぁぁぁっ!!! 」

は10メートル下の川に真っ逆さまに落ちた。

「!? ―――っ!!!」

落下した高さに加えて、水中では水を吸った背中の荷物の重さも加わり、身体は底へ底へと止まる事を知らない様に沈んで行く……。
当然水圧で耳が痛くなり、頭も締め付けられてくる。


『く……苦しい……』

しばらくもがく様に動かしていた手も、次第に息苦しくなるにつれて手先が痺れ出して来た。
そして意識が朦朧としかけた時、うっすらと開けた目に映ったのは暗い水の向こうから、こちらに向かって来る二つの影であった。


『何……?』

次第に近づいて来る二つの影、それは少年の様であった。
少年達は激流に揉まれた様に、流れに翻弄されながら苦しそうにもがいている。

は、ぼんやりとした頭で考えていた。

自分は底に向かって落ちているのに、なぜか彼らは横に流されている……。
本来なら在りえない現象。

もしかしたら同じ水の中にいても、彼らとは別の空間にいるのではないかと考えていた。

そして、とその少年達がすれ違う瞬間、偶然にも目が合ってしまった。


『あ……!』

彼らは信じられない表情でを見詰めた。

その瞳には驚きの他に、なぜか懐かしいものを見付けた様な色が含まれていた。

少年の一人は頭に金色のアクセサリーを付けていて、赤い服を着ている。
そしてもう一人は髪が長く、青い服を着ていた。

きっとこれは一瞬の出来事なのだろう……。
だが、には、まるで時が止まった様に感じられた。


『貴方達は……?』

は水の中にいるのも忘れて少年達に尋ねた。
少年達も自分と同じ様に、何か呟いている。

だが、当然の如く水中である為、声は届かなかった。

そうしている内に赤い服の少年が、懐かしそうな瞳で何かを呼びかけながら、自分の方へと手を伸ばした。

もう少しで手が届く……。そう思われた瞬間、再び時間が流れ出し、二人はそのまま暗闇の中へと消えて行ってしまったのであった。


あの少年は何を自分に訴えたかったのか?
今初めて遭ったと言うのに、なぜあんなにも懐かしそうな瞳を、自分に向けたのか?
はそう疑問に思ったが、今はそれどころではない。

このまま意識を失いそうになる自分を叱咤して、最後の力を振り絞り無我夢中でもがいた。

闇雲に手を動かしていたは、薄っすらと見えた光を見つけ自分が水面近くに上がってきたのを感じた。


『ああ……! もう少し……!!』


は必死に水面へと向かって行った……。

** 話数一覧 次話

****後書き****
ついに始まりました!異世界主人公小説!!
文章レベル1の私ですが、がんばって書き上げて行きたいと思います。
ちなみに途中水の中(?)で出遭ったのはモチロン!
Ⅱ主とジョウイです。
この話しに出てきた正体不明の女性は話しが進むにつれその正体が明らかになっていきます。
(モチ、オリキャラなのですが……<汗>)

>20040825

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